指つめ


24歳の頃、

事故で右手の中指を
つぶした。

骨を削り縫合したが、
5ミリほど指が短くなり、
爪も生えてこないかもと
言われた。幸い爪は
いびつながらも生えてきた。

もう、人前で手は見せられない。
これで恋愛も出来ない。
と、本当に思った。
人生が終わったと思った。


師匠長谷川泰三は、15歳で
脊髄傷で下半身麻痺となり
人生が終わったと思ったそうだが
それとは、あまりにもレベルが
違いすぎる。
でも、本人にとっては
事実の大小ではなく、
現実は人生終わったと思う。
他のことは見えず、自分は
最低最悪だと。

指つめがあったから
最低最悪だったのか?
いや、
自分の中にある、最低最悪を
証明するが如く、何かを
起こし、最低最悪を再確認する。
それがたまたま、指つめだった。

最低最悪。
自分が持ち合わせている感情。

指つめ。
人からは、「どうしたの」
「痛そうね」とは言われたが
それが原因で、人が離れた
事はない。