二人の姉の下に生まれた
わたし。未熟児だった。
私が小学校に入学した
年の初秋に父は亡くなった。
飲酒が原因と見られる
肝硬変から肝癌だった。
父の葬儀の時、親戚が
たくさん集まったので
私ははしゃいでいたらしい。
父の葬儀の後、財産分与の
名目で叔父叔母が、香典を
持って行った。祖父母が
そうさせたらしい。
まだ若かった母が、途方に
くれていたのは、何となく
覚えている。
自営の家だったこともあり
忙しく、あまり遊んで
もらった記憶もないので、
いなくなった実感は
感じられなかった。
いや、幼すぎて覚えていない
だけかも知れない。
一番近くにいるはずの
大人の男性がいない。
私は頭の中で、理想だけが
膨らんでいった。
こうあるべき。
こうするべき。
先生、そして大人になって
からも、上司に理想を求めた。
しかし、何処にも理想の
男性はいなかった。
理想は、他だけでなく、
自分自身にも求めた。
求める故、現実とのギャツブに
自己嫌悪に陥った。
私は父を恨んでいた。
心の弱さから、酒に溺れ
母子を残して死んだ。
勝手で弱い人間。そう
思っていた。
そして、私も結婚して
子供が生まれた。
私と息子、そして父は
同じ干支。ともに36歳の
時の子供。
私が父の亡くなった歳に
なった時、息子は7歳。
その頃、心理学と出会った。
その歳まで生きて来た
ものの考え方は、父の
死に関係し、支配されて
来た。あんな親父に
なるもんか。
心理学ワークを受け
初めて感じた事がある。
いま、もし自分が死んだら
幼い子供や妻を残して
死んだら…
どれだけ無念だろう。
心残りだろう。
父は高校卒業後、気象庁に
採用が決まっていた。
しかし、祖父が家業を
継がせるために、勝手に
断ったのだという。
ままならね人生。酒浸りに
なるかもしれない。
父が亡くなった歳になって
理解できる準備が出来た。
そのタイミングでの心理学。
幼い時からの、無意識の
うちに感じていた感情。
雪解けのように、変化
していった。